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松山地方裁判所 昭和42年(借チ)1号 決定 1968年3月13日

主文

一、申立人甲が別紙目録(一)の借地権を松山市一番町三丁目二番地六親和観光産業株式会社に譲渡することを許可する。

右借地権譲渡の地代を月額一三、九四六円と定める。

二、申立人乙が別紙目録(三)の借地権を右同所親和観光産業株式会社に譲渡することを許可する。

右借地権譲渡後の地代を月額一〇、七二二円と定める。

理由

(申立の要旨)

一、申立人甲及び同乙は、それぞれ相手方から別紙目録(一)及び(三)のとおり土地を賃借し、各借地上に同目録(二)及び(四)の建物を所有しているが、いずれも右建物を松山市一番町三丁目二番地六親和観光産業株式会社に譲渡する予定である。

二、会社は、飲食店経営等を目的とする会社であり、松山市内においてクラブ・旅館各数軒・自動車駐車場等を経営し、その営業成績及び資産内容はともに良好である。従つて、同会社に右各借地権を譲渡しても、賃貸人に不利となる虞はない。

三、よつて、右各譲渡につき賃貸人の承諾に代わる許可の裁判を求める。

(裁判所の判断)

一、申立人らがそれぞれ別紙目録(一)及び(三)の借地権を有すること、右各借地権の譲渡が賃貸人に不利となる虞のないことは、相手方も争わないし、本件の資料によれば、申立人らの申立事由は全部認めることができる。

そうすれば、本件各申立は、いずれも相当であつて、認容すべきである。

二、次に、附随処分については、鑑定委員会の意見に従い、当地方において、借地権譲渡に伴ういわゆる承認料の慣行がないこと、右各借地権の残存期間が約八、九年であること等を考慮して、申立人らに財産上の給付をさせる必要はないものとし、ただ衡平上、譲渡後の地代を、別紙目録(一)につき月額一三、九四六円に、同(三)につき月額一〇、七二二円にそれぞれ増額するのが相当であると判断する。

三、よつて、主文のとおり決定する。

(橋本 攻)

意 見 書

<当事者―略>

主文

一、附随裁判を必要とする。

二、別紙(一)記載の土地(以下甲地という)の地代を借地権譲渡の日より月額金一三、九四六円、別紙二記載の土地(以下乙地という)の地代を借地権譲渡の日より月額金一〇、七二二円に増額するを相当とする。

理由

一、松山市二番町三丁目一〇番三宅地三〇四・一九平方メートル(九二坪〇二)(登記簿上)は、大街道西電車停留所の南西約百米、三越松山支店建物の西側から約一九米に位し、同支店西側のいわゆる一間道路を入つて約一五米程先にある長さ約八米の通路に分断された矩形の整形地である。その地域は防火地域に指定されている。右通路の北側に甲地があり、その地上に申立人甲所有の別紙(A)記載の建物がある。また、右通路の南側に乙地があり、その地上に申立人乙所有の別紙(B)記載の建物がある。甲地の北は、県庁前有料モータープールの空地に接するが、東、南、西は建物に囲まれ街路に面しない。別紙(A)および(B)記載の建物は、いずれも終戦後、間もなく建設された古い住宅である。耐用年数の半分以上を経過し、建物それ自体の価値は著しく減少しているのでこの土地に適合すると思われないが、各金三百三〇万円で売買される予定で現在一ケ月それぞれ金三万円の家賃収入がある。

二、本件土地の時価は、立地条件の見方により必然的に当事者の主観がまじることになるので、現時点において、唯一の地価を定めることは困難であるが、附近商業地と住宅地の取引事例と比較考慮し公平に見て、その更地価格は、甲地が坪当り金三〇万円、乙地が同金二〇万円と評価される。ところが、右のように両地を評価すると、両地の地代は、現在それぞれ月額金六千三百円であるから地価とは採算上、不均衡の状態にある。したがつて、本件の場合、借地権価格なるものを想定せざるをえない。そこで、借地権価格を更地価格の五〇%と評価して甲地が坪当り金一五万円、乙地が坪当り金一〇万円、したがつれ、その差額である元本(土地)価額は、甲地が金一五万円、乙地が金一〇万円と評価される。そこで、右元本価格を基礎とした一ケ月の適当賃料額を円以下四捨五入して算定するとつぎのとおりになる。

甲地

(イ) 土地資本利子(元本価格×年五分)

¥150,000×0.05÷12=¥625

(ロ) 固定資産税

¥19,520÷92÷12=¥18

(ハ) 管理費((ロ)の税額の二割)

¥18×0.2‥¥4

(ニ) 合計理論賃料

¥6.25+¥18+4=¥647

(ホ) 四一坪の理論賃料

¥647×41=¥26.527

(ヘ) 限界増加額

(¥26.527−¥6,300)×0.378=¥7,646(〇、三七八は、内閣総理府統計局によつて毎年発表されているR・P・S資料に掲載されている地代、家賃の推移指数と、日本不動産研究所発表の土地価格推移指数の各限界変動率の比率)

(ト) 適当賃料(月額)

¥7,646+¥6,300=¥13,946

乙地

(イ) 土地資本利子(元本価格×年五分)

¥100,000×0.5÷12=¥417

(ロ) 固定資産税

¥19,520÷92=¥18

(ハ) 管理費((ハ)の税額の二割)

¥18×0.2=¥4

(ニ) 合計理論賃料

¥417+¥18+¥4=¥439

(ホ) 四一坪の理論賃料

¥439×41=¥417=¥17,999

(ヘ) 限界増加額

(¥17,999−¥6,300)×0.378=¥4,422

(ト) 適当賃料(月額)

¥4,422+¥6,300=¥10,722

三、本件借地権設定の時期は、終戦後であつて敷金、権利金の受授が行われていないこと、借地権譲渡にあたり当地においては、いわゆる承認料を地主に支払う取引慣行がないこと、および賃借権の存続期間は、甲地が約九年、乙地が約八年であること等を考慮し、財産的給付として申立人から相手方に支払わしめず賃料について増額するを相当とする。

<鑑定人―略>

別   紙

(甲 地)

(一) 松山市二番町三丁目一〇番三

宅地 三〇八・八八〇平方メートル(九三坪四三)のうち

一三六・五三五平方メートル(四一坪三)(実測)

(A) 建 物

右地上に存する

家屋番号同町一〇番三

木造瓦葺二階建居宅 一棟

床面積 一階 七九・六〇平方メートル(二四坪〇八)

二階 二一・九五平方メートル(六坪六四)

(乙地)

(二) 松山市二番町三丁目一〇番三

宅 地 三〇八・八八〇平方メートル(九三坪四三)のうち

一三六・七三七平方メートル(四一坪三六)(実測)

(B) 建 物

右地上に存する

家屋番号同町一〇番八

木造杉皮葺(現状瓦葺)二階建居宅一棟

床面積 一階 五五・四〇平方メートル(一六坪七六)

二階 三三・九一平方メートル(一〇坪二六)

目   録

(一) 借地権

1 土 地 松山市二番町三丁目一〇番三宅地三〇四・一九平方メートルのうち別紙図面の甲部分一三六・五三平方メートル

2 賃貸人 相手方

3 賃借人 申立人甲

4 契約日 昭和二二年五月一〇日

5 目 的 普通建物所有

6 期 間 三〇年

7 現在の地代 月額六、三〇〇円

(二) 建 物

同所同番、家屋番号一〇番三

木造瓦葺二階建居宅 一棟

床面積 一階 七九・六〇平方メートル

二階 二一・九五平方メートル

(三) 借地権

1 土 地 松山市二番町三丁目一〇番三宅地三〇四・一九平方メートルのうち別紙図面の乙部分一三六・七三平方メートル

2 賃貸人 相手方

3 賃借人 申立人乙

4 契約日 昭和二一年四月一五日

5 目 的 普通建物所有

6 期 間 三〇年

7 現在の地代 月額六、三〇〇円

(四) 建 物

同所一〇番地八、家屋番号一〇番八

木造杉皮葺二階建居宅 一棟

床面積 一階 五五・四〇平方メートル

二階 三三・九一平方メートル

図面<省略>

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